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STUDIO VOICE 1992 JANUARY Vol.193

1,500円

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海、波、撮影、入稿、雑用、使い走り。編集者とは名ばかりで、安月給をもらいながら、現場の端っこを走り回るだけの日々だった30年前の話。もちろんサーフィンは好きだったし、海も、波も、サーファーたちの生き方も、自分にとって大切な世界だった。けれど同時に、どこかで強く思っていたことがある。もっとクリエイティブな仕事がしたい。もっと自由に、もっと大胆に、もっと紙面そのものを表現として扱うような編集がしたい。生意気にもそんなことを愚痴っていた若かりし日々があった。 そんなある日、仕事をサボって立ち寄った書店で、『STUDIO VOICE』に出逢った。それは、当時自分が作っていたサーフィン雑誌とはまるで違う世界だった。サーフィン雑誌は、基本的には写真が主役だ。いい波、いいライディング、いいロケーション。文章やデザインは、その写真を支えるためのものだ。しかし『STUDIO VOICE』は違った。ページそのものが、ひとつの作品のようだった。写真、文字、余白、タイポグラフィ、構成、特集の切り口。そのすべてが、都会的で、アートフルで、洗練されていた。 書店の同じ棚には、『Spectator』や『relax』も並んでいた。『Spectator』には、どこかヒッピーカルチャーの匂いがあった。旅、思想、オルタナティブな生き方。文章を読むことで、遠くの焚き火のまわりに座っているような感覚があった。一方で『STUDIO VOICE』は、もっと都市的だった。夜の街のネオン、ギャラリーの白い壁、クラブの重低音、映画館の暗闇、海外のアートブック、知らない音楽、まだ名前のついていないカルチャー。そういうものが、ひとつの紙面の中で冷静に、しかし圧倒的な熱量で編集されていた。 私はその誌面に打ちのめされた。雑誌とは、ここまで自由でいいのか。編集とは、ここまで表現になり得るのか。ページをめくるたびに、自分の中のどこかが静かに燃えた。 1976年にスタジオVから創刊された『STUDIO VOICE』は、森英恵の『森英恵流行通信』、そして後の『流行通信』へと続くファッション・メディアの水脈を背景に持ちながら、やがて音楽、映画、写真、アート、文学、思想、クラブカルチャー、ファッションを横断する独自のカルチャー誌へと進化していった。メジャーとアンダーグラウンド。都市とストリート。知性とノイズ。アートと商業。紙と時代。『STUDIO VOICE』は、それらを一冊の中で衝突させ、編集し、ひとつの感度として提示していた。 今になって思えば、あの頃の私は『STUDIO VOICE』を読んでいたというより誌面の作り方を盗んでいたのだと思う。特集の立て方、カルチャーへの距離感、デザインの緊張感。そして、雑誌というメディアが持っていた危険で美しい可能性を。 『STUDIO VOICE』は、単なる古いカルチャー誌ではない。雑誌がまだ、時代を切り裂く刃物だった頃の記録である。そして、若い編集者の胸に「いつか自分も、こんな紙面を作ってみたい」と火をつけた、ひとつの事件でもあった。ページを開けば、90年代からゼロ年代へ向かう都市の匂いが立ち上がるカルチャーがまだ雑多で、危険で、自由で、美しかった時代の空気が、そこには残っている。 『STUDIO VOICE』、大量に入荷しました。

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