『AKIRA』は、ただの名作漫画じゃない。それは、マンガが“子どもの読み物”でも“サブカルの一角”でもなく、都市、暴力、政治、テクノロジー、不安、反抗、崩壊後の未来までを丸ごと呑み込める、剥き出しの表現媒体だと世界に証明した事件そのものだった。大友克洋が描いたのは、未来ではなく、むしろ常に壊れかけているこの現実の正体だ。過剰な情報、膨張する都市、行き場を失った若者の怒り、国家と科学への不信。そのすべてを、異様な熱量と精密すぎる筆致でコマの中に封じ込め、マンガ表現の到達点を一気に更新してしまった。
『AKIRA』以後、世界は日本のマンガをただの“コミック”としては見なくなった。アート、映画、ファッション、音楽、デザイン、SF表現、そのどこにもこの作品の残響は入り込んでいる。ネオ東京の瓦礫と閃光は、いまもなおクリエイターたちの視界を焼き続けているのだ。『AKIRA』とは物語ではない。時代の亀裂から噴き出した、文化そのものを変えてしまった黒いエネルギーである。
集英社発行 全6巻セット 多少の日焼けやヤレ感はあります。